背景
実社会には、医療、金融、物流、公共政策など様々な分野に、これまで人間が行ってきた複雑な意思決定や、膨大な学習用入力データに基づいた最適な解の選択など、現在のコンピューティング技術では実用的な時間で解くことができない問題が膨大に存在します。このような問題に対して、株式会社富士通研究所(注4)は、組合せ最適化問題を高速に解くアーキテクチャー「デジタルアニーラ」を開発し、2018年5月に富士通よりサービス提供を開始しています。「デジタルアニーラ」は、従来の半導体技術を用いて、実社会における組合せ最適化問題を高速に解くことができる計算機アーキテクチャーです。
しかし、組合せ最適化問題を解決するには、業務や社会課題を組合せ最適化問題として定義し、数式モデルを構築する高度なスキルが求められます。
「Topcoder」は、情報技術、コンサルティング、ビジネス・プロセス・サービスで世界大手のウィプロ・リミテッドによって運営される、アルゴリズム・ソフトウェア開発・UI/UXデザイン分野の最新技術に強いスキルと関心を持つ世界最大級の技術者のコミュニティであり、特にアルゴリズム開発や改善においては世界でも特に高いレベルのスキルを持つ技術者が多数在籍しています。世界の大手企業や国家機関の多くが「Topcoder」を活用し、最新テクノロジーの浸透普及・開発者育成を実施するとともに、高度な問題解決におけるパートナーとして連携しています。日本国内においてはTC3が、「Topcoder」のコンテストを活用した最新スキルのソーシング・サービスを提供しています。
今回、富士通とTC3は、「デジタルアニーラ」に関する普及促進を目指すとともに、難易度の高い問題などにおける「Topcoder」との連携効果を検証しました。
https://www.topcoder.com/lp/digitalannealer
Forbes記事でのご紹介
2月21日に発行されたForbesのJohn Winsor氏による記事”Don’t Retrain Your Team — Instead, Tap The Expertise Of Gig Workers On Demand”(チームメンバーの再教育をする代わりに、ギグワーカーの専門スキルをオンデマンドに活用しよう)において、TC3、富士通、Topcoder3社が連携して現在開催している富士通のDigital Annealerを活用したコンテスト・シリーズが紹介されました。
この記事の中で、TopcoderのCEOであるMike Morris氏へのインタビュー内容が引用されています。企業は量子コンピューティング、ブロックチェーン、人工知能(AI)など最先端のテクノロジーを用いるために、コストと時間のかかる社内チームメンバーのトレーニングや、必要なスキルセットを持った新しい社員の採用を行うだけではなく、必要なスキルをもった「タレント」の属するプラットフォームも活用するべきと述べています。そして、それは既に利用可能であることが、今回の富士通のDigital Annealerを活用したコンテストシリーズによって実証されつつあると述べています。
Don’t Retrain Your Team — Instead, Tap The Expertise Of Gig Workers On Demand
以下は、本記事の意訳によるご紹介です。
チームメンバーの再教育をする代わりに、ギグワーカーの専門スキルをオンデマンドに活用しよう
John Winsor (CMO Network)
私は、TopcoderのCEOであるMike Morrisと多くの仕事をしています。Topcoderは、優れたタレントネットワークを擁し、クラウドソーシング・プラットフォームを提供する会社です。
Morrisによれば、彼らは先週、とても興味深いコンテストを開催したとのことでした。それは、世界で最も難しいとされる数独の問題を、量子コンピューティング技術※1を使って解いてみよう、というものです。結果、総勢205名もの挑戦者(世界中の、である)が結果を出し、最終的には中国のメンバーが勝利を勝ち取ったのだそうです。
Topcoderは、日本の大手ICT企業である富士通、それから日本でのプレミア・パートナー企業であるTC3と協力して、量子コンピューティング技術のコンテスト・シリーズを開催しています。私がまず思っているのは、次の3つの重要なポイントにおいて、これは非常に素晴らしい取り組みだということです。
その1点目は、世界中のギグワーカー※2をうまく惹き込んで、彼らに量子コンピューティングという道具に実際に触れてもらい、楽しみながら問題解決のスキルを磨いてもらっていることです。これは私が数週間前に記事に書いた、パッションを持ったコミュニティのまさに実例であると言えます。
2つ目の重要なポイントは、この先進的なテクノロジーの潜在能力が、企業や行政における課題解決に有用であることを、これらの取り組みを通じて明らかにされている、ということです。またそれは、Topcoderのコミュニティメンバーの「新しい技術を学びたい」という学習意欲にも寄与しています。
そして3点目、これは本当に重要なポイントです。それは何かと言うと、最も洗練されたオープンイノベーションのストラテジーとツールが、既にあなたの会社から使うことができる状態にあるということです。あなたのチームに、新たに専門家を雇ったり、専門のトレーニングをしなくてもよいのです。
数独のことは知っている人は結構多いのではないかと思います(全く知らないという方ももちろんいると思いますが)。一方、量子コンピューティングについて理解をしている方はどのくらい居るでしょうか?それほど多くは無いでしょう。
それで、このコンテストにおいて何が起きているかと言うと、それは、わたしたちが常に時代に取り残されず適切な会社であり続けることができるということが、TopcoderとTC3そして富士通によって示されているということです。私たちは、Topcoderのようなプラットフォームに集まっている熟達したタレントと常に接してさえいれば良いのです。
「常に変化するテクノロジーに対して、企業が今ほど迅速に対応しなければならない時代はありません。」とMike Morrisは語ります。「そのような状況の中でも、これらの新しいテクノロジーを取り入れ、迅速かつ効率的に成長およびスケールさせることに成功している企業もあるのです。量子コンピューティングやブロックチェーン、AIなどの技術に乗り遅れないよう自社のチームをトレーニングする、または新たな専門家を雇うということが不可能な状況もあるかも知れません。が、その一方で、それを完全に可能にする(しかも高い費用対効果で)方法もあるのです。それは、スキルを持ったタレントを有するプラットフォームを活用することです。」
私たちは第4次産業革命の真っ只中にいます。業務はデジタル化されつつあり、オープンシステムや量子コンピューティングのような最先端テクノロジーが仕事のやり方を変えつつあります。「大企業に所属する全てのリーダーは、数年後にはどのような未来が訪れるか考えることが必要でしょう。」Morrisは続けます。「ビジネスを変革しスケールさせるためにはどのような人材が必要なのでしょうか? また、そのような人材はどこで見つけることが出来るのでしょうか?」「各分野のエキスパートが最先端の技術を駆使する、コンテスト型の、そしてオンデマンドのタレントモデルがその選択肢のトップとして挙がるはずです。」
未来の働き方は、インフラやチームメンバーの増強への依存度は弱まり、量子コンピューティングやブロックチェーン、AIのようなオープンな技術を活用することになるでしょう。企業のCxO層はこの変革モデルにどの程度反応するでしょうか? Topcoderのようなクラウド(Crowd)プラットフォームのタレントを活用による未来の働き方に対して準備の出来ている企業は、そうでない企業と比べて大きな優位性を持つことになるでしょう。
John Winsor is the founder and CEO of Open Assembly.
【注釈】
※1: 原文では “inspired by quantum computing” と表現されていますが、富士通社のDigital Annealer技術が使用されています。
※2: ギグワーカー(gig workers) とは、日本ではまだ馴染みが薄い言葉ですが、フリーランスの開発者、が近いと思います。
Topcoderのマラソンマッチ
Topcoderのマラソンマッチについては以下のページより資料をご確認いただけます。
https://info.tc3.co.jp/topcoder-marathon-match-intro-download