背景
株式会社ジー・サーチ(以下、ジー・サーチ)は、富士通株式会社のグループ会社で、「データビジネス」と「デジタルソリューション」を事業としています。「データビジネス」においては、日本最大級の科学技術文献情報データベースである『JDream Ⅲ』や全国約145万社の企業情報が集められている『G-Searchデータベースサービス』を提供しています。また、「デジタルソリューション」としては、デジタルマーケティング領域からCMS(コンテンツマネジメントシステム)などを提供しています。様々なデジタルサービスをWebサービス、SaaSの形態で提供しており、多くの企業にそのサービスが利用されています。
〜データドリブンに基づくビジネス最大化と顧客体験の向上〜
継続的にジー・サーチが提供するサービス数が拡大していく中で、「データ」を活用したマーケティングや営業戦略を実行することが重要視されていました。しかし、既存のサービス群はそれぞれが個々に認証機能を実装しているため、データの集約が難しい状況でした。また、利便性向上の観点において、ユーザーからも複数サービスを1つのIDで利用できるような「SSO化」の要望が寄せられていました。
これらの背景から、「データドリブン」な施策実行によるビジネス最大化と顧客体験の向上を実現するための共通認証基盤の構築が、ジー・サーチ社内における喫緊の課題となっていました。その解決策として、サービス横断的な認証認可、ユーザー情報管理ポータルなどの機能群となる「アカウント管理基盤」を構想していました。検討を進める中で、「認証認可」の要素だけではなく、「サービス管理」、「課金管理」、「組織管理」などのバックエンド機能や、「ユーザー向け・業務向けの管理画面」を開発する必要性が求められていました。
採用背景
ジー・サーチが具体的に解決策となり得るアカウント管理基盤の検討を進める中で、TC3が提供するTactna Identity Platform(以下、Tactna)に出会いました。Tactnaは、様々なIDaaSに対応したカスタマーエンゲージメントハブです。複数サービスを横断した統合ID基盤として機能するだけでなく、顧客や業務担当者が利用する管理ポータルをSaaSとして提供しています(デモを含む紹介サイトはこちら)。
今回ジー・サーチが検討していた「アカウント管理基盤」における構想は、複数サービスを横断するSSO機能を中心とした認証認可機能と、ユーザーと業務向けの管理画面などの機能群であり、多くの要件がTactnaによって解決できることが分かりました。以下に表として要件の一部とスクラッチ開発とTactnaとの比較を示し、詳しく採用理由と照らし合わせて説明します。
要件概要 | スクラッチ | Tactna(カッコ内は機能名) | |
認証認可 | ユーザー単位 | ◎(IDaaSを活用) | ◎(IDaaSを活用) |
組織単位 | ☓ 要開発 | ◎(Tactna Coreを活用) | |
複数サービス対応 | ☓ 要開発 | ◎(Tactna Coreを活用) | |
ポータルサイト | ユーザー向け | ☓ 要開発 | ◎(ポータルサイト) |
業務向け | ☓ 要開発 | ◎(ポータルサイト) | |
独自コンポーネント | ☓ 要開発 | ◯(Embedded UIを活用) | |
拡張 | 課金管理 | ☓ 要開発 | ◯(Workflow Hookを活用) |
契約・サービス管理 | ☓ 要開発 | ◯(Workflow Hookを活用) | |
社内システム連携 | ☓ 要開発 | ◯(Workflow Hookを活用) |
●採用理由1:業界標準かつ組織概念が実装できる認証認可機能
認証認可機能の簡易的な実装のみであれば、Amazon CognitoやOkta Customer Identity Cloud (Auth0)などのIDaaSを活用することが可能です。これらのIDaaSは、ユーザー単位での認証認可には対応しているものの、組織単位で認証認可を行うことや複数サービスを1つの認証基盤で対応することは難しく、なかなか良い方策が見つかりませんでした。Tactnaでは、会社や部署などを1つの括りとする組織概念の実装や複数サービス向けにおける認可情報の管理機構をTactna Coreとして提供しており、この機能があることがTactnaの採用を後押ししました。そして、認証認可レイヤーのグローバルセキュリティ標準対応や監視・運用をTactnaに任せられることも大きな理由でした。
●採用理由2:ユーザー向け 及び 業務向け ポータル
単一アプリや複数アプリにおいても、アプリケーションを展開する場合、ユーザーにサービス登録から、基本情報入力までセルフサービスで実施してもらうことが一般的です。その際に必要となる、マイページなどのようなポータルサイトが必要です。
また、ユーザーのパスワードリセットや様々な管理を業務担当者が行うために、業務担当者向けの運用機能を備えたポータルサイトも必要となります。これらのポータルは本来アプリケーション開発においてはビジネスにあまり貢献しない為、利便性に欠く傾向にあります。Tactnaを利用することで、シンプルなマイページや運用ポータルをスピーディに実装できるという点も採用理由の2つ目のポイントです。
●採用理由3:社内システムとの連携、業務要件に対応できる拡張性
最後にユーザー体験や業務的な制約などを実現するために、課金管理や契約管理、社内システムとの連携など、サービス提供者独自の要件に対応することも多く求められます。Tactnaがサービス提供者の要件に合わせて、ロジックを組む機構(Workflow Hook)や、独自のコンポーネントを柔軟に追加する(Embed UI)を提供しています。このように柔軟な要件対応ができることが3つ目の採用理由です。
システム構成図
「ジー・サーチ アカウント基盤」としてプロジェクトを発足し、Tactnaの機能を活用した開発を開始しました。要件定義フェーズにおいては、主に決済機能であるVeritrans 4Gとの連携部分やユーザー側で操作できる契約プランの変更など、ポータル側でジー・サーチの独自要件に基づく内容を整理しました。

実装完了イメージ図
以下に、実装されたユーザー向け、業務向けの管理画面の一部をご紹介します。




導入効果
●B2Bビジネスにあった認証認可機構の実装
当初、法人単位や部署単位で認可を行うようなアカウント管理基盤の実装は既存のIDaaSが提供する機能だけでは実現できないことが課題でした。しかし、Tactnaが提供する、組織、アプリやユーザーの属性情報や権限情報などを3軸でコントロールする機能であるTactna Coreの活用により、その課題の解決を可能としました。Tactnaを採用することで、法人向けビジネスかつ複数サービス展開の基盤という、目標に向け大きく前進することができました。
●短期間での導入
通常、複数サービスの展開や組織の概念を取り入れるためにはアプリケーション側のユースケースの整理など、認証認可においては複雑な要件定義や設計が必要となります。また、ユーザー向けの管理画面や業務向けの管理画面などの設計も含めると、開発体制の肥大化や開発期間の長期化に繋がる可能性があります。このような条件下でしたが、Tactnaのベストプラクティスを採用し、拡張開発をしたことで、本来1年程度要すプロジェクトを約6ヶ月程度で完了させました。
●品質の高い機能の実装
短期間で導入しつつも、TC3のノウハウを活用することで、自社のリソースだけでは考慮不足になりやすいポイントも確実に押さえて、手戻りを少なく導入することができました。最新のID管理におけるセキュリティ要件をしっかり抑えつつ、Tactnaの仕様に業務を可能な限り合わせることで認証基盤全体の品質を高めることができました。
今後の展望
既に1つのサービス向けの管理ポータルとしてはリリースしていますが、順次提供サービスへの対応を進める予定です。今後2年で全てのウェブサービスがジー・サーチ アカウント基盤(Tactna)と連携し稼働していくことを計画しています。また、MAツールとの連携、データ分析基盤との更なる連携を行い、ビジネス拡大に向けて取り組む予定です。これらの活動により顧客利便性が向上することでアップセルなどの効果も期待しています。
「Tactna Identity Platformを採用することで、最終的に実現したい「データ利活用」に向けた基盤を整えることができました。今後はすべてのサービスをTactna上に乗せることを計画しており、認証認可はもちろん、組織の概念の実装など、本来はアプリケーション毎に検討するアイデンティティ領域の検討・実装コストが個別に不要となることで、アプリケーション開発に集中できることを期待しています。また、Tactnaの今後のパワフルなアップデートに期待したいと考えています。」 株式会社ジー・サーチ デジタルソリューショングループ グループ長 稲垣 明様
おわりに
Tactnaが実装されたサービス「企業INDEXナビ」は以下ページより無料会員登録が可能です。是非ご利用ください。
Tactnaは、複数サービスの展開、B2Bサービスの展開におけるアイデンティティ領域のコントロール機能を提供するカスタマーエンゲージメントハブです。グローバルの標準に準拠した認証認可機能を内包し、B2Bに必要とされる組織概念の実装が可能です。また、サービス展開に必要となるユーザー向け、業務向けの管理画面を提供し、柔軟な要件にも対応可能で様々な業態にご利用頂けます。Tactnaを活用することで、セキュアかつユーザー体験の高い機能をスピーディに実装すると同時に、業務効率化を実現することが可能です。
Tactnaについての詳細は以下URLよりご確認ください。